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最高裁判所第一小法廷 昭和25年(れ)953号 判決 1950年9月28日

主文

本件上告を棄却する。

理由

弁護人永井正恒の上告趣意第一点について。

しかし、原判決の認定した判示第一の事実は、改正前の酒税法六〇条一項、一四条違反の事実であって、同条違反の罪は免許を受けずして酒類すなわちアルコール分一度以上の飮料を製造すれば成立するものであるから、原判示のごとく酒精分一三、二%を含有する合成清酒を製造した旨判示した以上該飮料が酒税法五条にいわゆる合成清酒ではなく、他の酒類に該当するものであるとしても犯罪の成立に差異を来すものではない。されば、原判示の酒精分を含有する飮料が合成清酒ではなく、他の酒類であるとしても原判決の理由にくいちがいあるとはいえない。しかのみならず、酒税法五条に「本法に於て合成清酒とはアルコール、燒酎又は清酒と他の物品とを混和して製造したる酒類にして其の香味、色沢其の他の性状が清酒に類似するものを謂う」とあるのは、既成のアルコール、燒酎又は清酒と他の物品とを混和して製造すると新にアルコール、燒酎又は清酒を製造する過程中に他の物品と混和して製造するとを問わないものと解するを相当とする。そして、原判決挙示の証拠によれば、判示飮料は、その製造の過程において燒酎を製成すると共にこれに藥品等他の物品を混和して酒精分一三、二%を含有する清酒に類似した性状のものを製造したものであることが認められるから、原判決がこれを合成清酒と判示したのは正当であって、論旨は、いずれの点からしても採用できない。

同第二点について。

しかし、原判決は、本件飲料が酒精分一三、二%を含有する合成清酒であることを所論鑑定書だけで認定したものではなく、挙示のその他の証拠を綜合してこれを認定したものであって、原判決挙示の証拠によれば、原判決の認定を肯認することができる。そして、所論鑑定書中に「清酒」とあるのは、「合成清酒」の誤記であること他の証拠と対比することにより明らかであって、原判決も同鑑定書の記載を本件犯則嫌疑の「酒類」と認定してこれを証拠に供している。されば、原判決には所論のように証拠によらないで事実を認定した違法あることを認め得ないし、また、所論事実誤認の主張は適法な上告理由ではないから、論旨は採用できない。

よって旧刑訴四四六条に従い主文のとおり判決する。

この判決は裁判官全員の一致した意見である。

(裁判長裁判官 齋藤悠輔 裁判官 沢田竹治郎 裁判官 岩松三郎)

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